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研究紹介

タンパク質は
柔らかな生体ナノマシンであり、
構造を変化させながら機能しています。
久保研では
さまざまな分光法を用いて、
タンパク質の構造揺らぎや
中間体構造を動的に解析しながら、
タンパク質の設計原理を
研究しています。
生体ナノマシンの原理を理解することは、
これからの分子設計
(人工タンパク質の開発や創薬など)
の基礎になるでしょう。
私たちはタンパク質のなかでも、
ヘムやフラビンなど補因子を用いて
緻密にはたらくタンパク質や、
天然変性領域を用いて
複雑に機能するタンパク質に
興味をもっています。

DNA光修復酵素/クリプトクロム

ファミリーの分子進化と機能進化

DNA光修復酵素とクリプトクロムは
共通の祖先をもつタンパク質であり、
バクテリアから哺乳類に至るまで
生物界に広く存在しています。
ビタミンB2から合成される
フラビンを補因子としてもち、
青い光を利用して働きます。
DNA光修復酵素の機能は、
紫外線によって損傷した
DNAの修復です。
一方、DNA光修復酵素から分岐した
クリプトクロムの機能は、
生物種によって多岐にわたります。
われわれ哺乳類では、
体内時計(概日リズム)を
制御しています。
このタンパク質ファミリーを研究することで
タンパク質の分子進化・機能進化を
​理解したいと思っています。
PCSF.jpg

【DNA光修復酵素】

DNAは紫外線によって損傷しますが、

多くの生物はDNA光修復酵素を用いて

その損傷を修復できます。

DNA光修復酵素は

青色の光を吸収し、

その光のエネルギーを用いて

DNAを修復するのですが、

ある損傷((6-4)光産物)

の修復について、

1光子で十分か、2光子必要か

という論争があります。

自作の時間分解紫外分光装置を用いて

私たちはこの問題に取り組み、

最近、生物種によって

修復に必要な光子数が

異なることを発見しました。

どうやらメカニズムにも

進化があるようです。

現在は、分子進化との関連を

系統的に調べています。

【クリプトクロム】
クリプトクロムはその名のとおり
cryptic ​なタンパク質で、
DNA光修復酵素にホモログな領域に
天然変性領域(静的構造をもたない領域)
が付加された構造をもっています。
その機能は生物種によって多種多様。
高校生は植物の光受容体として
習うようですが、
動物においては
体内時計(概日リズム)の制御、
渡り鳥などある種の生物では
磁気感覚に関与していると
​考えられています。
(私たちはクリプトクロムの
磁気コンパス研究も開始しました。
その話はまた後日。)
ところで近年、
緑藻クラミドモナスにおいて
奇妙なクリプトクロムが
発見されました。
動物型のクリプトクロムに分類され、
CraCRYと名付けられた
そのクリプトクロムは
光受容体としてはたらきますが、
​損傷DNAを見つけると
それを修復してしまいます。
分子進化の狭間で
DNA光修復酵素と
クリプトクロムの
両方の機能を獲得した産物
といえます。
​DNA光修復酵素としての
過去を覚えている
クリプトクロム
と言ってもいいでしょう。
一つのタンパク質で
(一つのアミノ酸配列で)
いかにして
二機能を果たし得るのか?
私たちはその新奇なしくみを、
X線小角散乱・赤外分光・
円二色性分光・NMRなど
さまざまな分光法を用いて
調べています。

呼吸系タンパク質の活性制御

生体エネルギー生産の場である
ミトコンドリア呼吸鎖の活性を上昇させる
新規タンパク質や薬剤の作用機構を
ラマン分光を用いて調べています。

特にヘムを有する
シトクロム酸化酵素複合体の
活性増強機構を調べています。
将来、ミトコンドリア病の治療に
役立つ日が来るかもしれません。
研究概要
図4.png
(Essential細胞生物学の図を改編)

以上のほかにも、
協同性を有する人工ヘムタンパク質
の創製や
新しい振動分光装置の開発など
工学的な研究も行なっています。​
興味のある方、久保研に参加したい方は
ご連絡ください。
(物理学の知識は必要ありません。)​
 
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